四季の移ろいを表した和菓子、練り切りのデザイン性

 

練り切りについて

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練り切りとは、白あんにつなぎの粉を混ぜて練った和菓子です。
 
柔らかく美しい細工が施された練り切りは、「上生菓子」という高級な生菓子に分類され、お茶席などでは最高級のおもてなしとして出される特別なもの。
 
季節の草花や風物を模したデザインが多く、それを表現する和菓子職人の技術にも目を見張るものがあります。
 
それぞれの練り切りには「菓銘」といって、絵画の作品名さながらにモチーフの名前がつけられます。
 
このように、お菓子の名前にも意味を込めるほどこだわりが見えるのは、日本独自の文化と言ってもいいでしょう。
 
同じ菓銘でも、和菓子屋や職人によってまったく異なる表現がなされるので、その違いにも注目です。
 
それでは、四季折々で変化する多種多様な練り切りを追っていきましょう。

春の練り切り

ここでは、春をイメージしたデザインの中でも、特に代表的な練り切りをご紹介します。
 


まずは、言わずと知れた春の象徴である桜です。
 
淡くピンクに色付けされた練り切りを5枚の花びらに見立てた細工は、優しい印象を抱かせます。
 
基本の形は細工が簡単なので、和菓子作り初心者の方でも挑戦しやすい題材となっています。
 
桜の花を模した練り切りだけではなく、実際に食べられる桜を添えた練り切りや、桜の形を押印した練り切りなどもあります。
 

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こちらは、春の訪れを告げる鳥・うぐいす。
 
ふっくらとしたフォルムと小さな目が愛らしい練り切りですね。
 
うぐいすは2〜5月の繁殖期に鳴き始めるため、その時期に作ると春の訪れが感じられるでしょう。
 
桜の練り切りと並べて置くと、絶妙な色のバランスと春の香りが感じられますよ。

夏の練り切り

続いては、涼しげな夏をモチーフとしたデザインの練り切りをご紹介します。
 

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こちらは、朝顔をイメージした練り切り。
 
朝顔の造形は、美しいグラデーションで表現された一輪の花に、葉やツタを添えた装飾が一般的。
 
また、同時期に咲き始める紫陽花も、朝顔と並んで夏の練り切りと言われています。
 


紫陽花は、錦玉(きんぎょく。寒天と砂糖を溶かし、冷やし固めたお菓子)を使ったものや、練り切りを小さな花びら型に切り抜いて飾り付けたものなどがあります。
 
写真は、錦玉で作られた紫陽花です。
 
ほかにも、夏を題材にしたものには、ひまわりや七夕をモチーフにした練り切りもあり、どれも清涼感あふれる色合いになっています。

秋の練り切り

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春や夏とはまた違って、はっきりとした色合いの練り切りが多くなってくる秋。
 
秋といえば紅葉です。
 
赤や黄色など豊かな色合いで表現された一葉は、それだけで風流を感じさせます。
 
紅葉以外にも有名な秋のイベントといえば、お月見がありますね。

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「月」と「白うさぎ」を合わせて飾れば、お月見にぴったりの練り切りになるでしょう。
 
ちなみに、お月見は本来、十五夜(9月中旬頃)と十三夜(10月中旬頃)と二回あり、どちらか一方だけお月見をする「片月見」は縁起が良くないとされています。
 
せっかくなら、十五夜だけでなく十三夜の時期にも練り切りを備えて、お月見を楽しんでみましょう。
 
また、最近の秋の風物詩といえば、ハロウィンを思い浮かべる方も多いかもしれませんね。
 

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日々進化を遂げる和菓子は、西洋の文化も取り入れ、かぼちゃやハロウィンをモチーフにした練り切りを製作する職人も増えてきました。
 
あんこにはかぼちゃを使うことが多く、和洋折衷の見た目と味わいを楽しむことができますよ。

冬の練り切り

冬は、雪や梅が主役となるデザインの練り切りが多くなってきます。
 

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こちらの練り切りは、綿雪のようにふわふわとしていてシンプルながら繊細な気品を感じさせる一品です。
 
先ほど秋で紹介した「白うさぎ」も、その白さから雪をイメージさせるため、冬に製作する和菓子屋もあります。
 
また、新春に伴っておめでたいモチーフが多くなってくるのもこの季節。
 
長寿の象徴である鶴や、繁栄の意味を込めて松などの縁起物をかたどった練り切りは、食べる方の息災や幸せを願ったものであるため、年明けに向けて多く作られます。
 
そして年が明け、開花を迎える梅の花は、別名「春告草」とも言われるように、冬の終わりと春の到来を告げる花です。
 
梅は、日本人に親しみ深い花。
 
そのため、梅を題材にした練り切りは特に多くのデザインがあり、冬の厳しさを耐え抜いた日本人の心を癒してくれます。

練り切りを通じて感じる四季


練り切りは、味だけでなく形や菓銘にも作り手の想いが込められた、五感で味わう芸術です。
 
最近では、キャラクターをモチーフにした練り切りが販売されることも多くなっています。
 
高級な和菓子だからと敷居が高く感じてしまうかもしれませんが、職人が意匠を凝らした練り切りには、その随所に職人の遊び心が込められているのです。
 
練り切りに込められた意味を作り手に尋ねてみてもいいかもしれませんね。
 
練り切りは、季節によって姿を変えるもの。
 
今の時期しかない練り切りが、みなさんと出会う瞬間を待っています。
 
それぞれの形に隠された想いを感じながら、四季の移ろいを堪能してみてはいかがでしょうか。