人類史の原点!草木染めが辿ってきた歴史

 

草木染めって何?


科学が発展するはるか昔から根付いていた「染める」文化。
 
それにはもちろん、植物を主とした自然由来の染料が使われてきました。
 
植物の葉や幹、花などを煮たり醗酵させたりして、赤や青、黄色などの色素を抽出し、布や糸、紙などを染めていきます。
 
そう、植物は本来とてもカラフルなのです。
 
植物のほかに、昆虫や貝などから色を出すこともあるのだとか。
 
「草木染め」と呼ばれるその手法は、昭和初期に命名されましたが、技術そのものは紀元前数千年以上も前には確立していたと言われています。
 
染める対象には、衣服はもちろん、爪や髪も含まれていますよ。
 
そんな伝統を誇る草木染めが辿ってきた変遷と、日本における衣類の文化との関わりについて迫っていきましょう。

草木染めはどこで生まれたの?


草木染めの発祥は中近東。そこを中心に、ギリシャやローマへと広まっていきました。
 
一方の東洋では、中国が発祥とも言われます。
 
古代エジプトやインドでは「貝紫」「アリザリン(西洋茜)」など。中国では「黄檗(きはだ)」などが主な染料として使われていました。
 
当時は、草木から染料を抽出する技術のみならず、染色自体も複雑だったため、染色技術そのものが非常に貴重なものだったのです。
 
だからこそ、ほとんどの文明の中で貴族の象徴とされていた草木染め。
 
それは日本でも、例外ではありませんでした。

日本で草木染めはどのように発展していったのか


日本では縄文時代(紀元前1400年頃)の遺跡から、染色が行われた形跡が発見されています。
 
飛鳥時代(592〜710年)になると、中国や朝鮮などの大陸から高度な織物・染色技術が入ってくるようになり、この頃から日本の衣類文化は急速な発展を遂げるようになりました。
 
色によってその地位を分ける「冠位十二階」の制度が開始されたのは奈良時代(710〜794年)。
 
当時好まれていたのは、赤や青、黒などはっきりした色彩。
 
特に合成染料などがない時代、高価な素材である「貝紫」や「紫根」から抽出される紫色は、最も貴重だったと言われています。
 
紫は今でも高貴なイメージが根付いていますが、こうした背景が影響しているのかもしれませんね。

化学染料の台頭


1856年、染物に「合成染料」という新たな要素が加わりました。
 
天然染料よりも安価で手軽な合成染料は、世界の染色技術の主流となっていきます。
 
日本では明治初頭から合成染料の輸入が始まり、草木染めが合成染料に取って代わられるように。
 
一時期は植物染料による染色が途絶えてしまったほど。
 
けれども、第一次世界大戦(1914〜1918年)の影響で化学染料の輸入が途絶えると、再び草木染めが脚光を浴びるようになりました。
 
現在では、流通している衣類などの商品の99%以上が合成染料ですが、草木染めの技術もいまだ高く評価されています。
 
そんな草木染めの良さは、一体どこにあるのでしょうか。

草木染めの魅力


草木染めの魅力は、何と言っても天然素材でできていること。
 
天然素材だからこそ、人体にも環境にも優しい染物ができるのです。

安全性が高い

合成染料の中には、人体に良くない影響を与えるものや、アレルギーを起こしやすいものもあります。
 
その点、草木染めは自然の素材なので、人体に害を及ぼす心配はありません。

環境に優しい

合成染料の排水は環境汚染の原因とされ、日本では浄水施設の設置がされています。
 
しかし、天然由来の草木染めであれば、染色の際に出る排水や廃棄物も、より自然に近いものになるので安心。
 

複雑な色合いが出せる

人工的に作られる分、安定した色が出る合成染料。グラデーションなど微妙なニュアンスの色合いを出す場合、数種類の染料を調合する必要があります。
 
一方の草木染めは、もともと染料の中に様々な色素が混ざっているため、淡いグラデーションや色をいくつも重ねたような風合いなど、複雑な表現ができるのです。
 

薬効がある

 
草木染めの原料となる植物などの中には、抗菌や病気予防などの効果を秘めたものもあります。
 
赤色の原料となる茜は「血行促進」「浄血作用」などの効果が。
 
緑の原料となるよもぎには「ホルモンバランス調整」「リラックス効果」などがあるとされているのです。
 
古代より服は着る薬であり、「服用」の語源もこのことからきていると言われているほど。
 
このように、天然素材を用いる草木染めには、あらゆるメリットがあるのです。

再び注目される草木染め


お洒落をしたいと思う人の気持ちは、数千年の時を超えても変わらないもの。
 
長い歴史と人々の努力の賜物が、こうして今も脈々と受け継がれているのです。
 
普段の生活では、草木染めを知る機会がないかもしれませんが、博物館を訪れたり、草木染めの体験をしてみたり…
 
これを機に、草木染めの世界に触れてみてはいかがでしょうか。